聖域より愛をこめて 4


 狭い室内の中央に置かれた、大人の男一人が横になるにはやや手狭な寝台の上に、カノンはじっと横たわっていた。
 傍らには、木製の小さなチェストが一つと、それから少し離れたところに、やはり木製の簡易チェアとそろいのテーブルが一式置かれている。
 いずれも年季が入っており、ところどころ角がささくれ立っていたり、塗装が剥がれ落ちて変色したりしているが、一度として補修された様子はない。他に家具らしい家具といえば、古めかしい大きな本棚が一つきりだ。
 隙間なく並ぶ蔵書はいずれも分厚く、丁寧な革張りの装丁がほどこされたものばかりだが、あまり読まれた形跡がないのも特徴だった。
 だがこの本棚こそが、部屋の中でもっとも多くの面積を占めているのは間違いない。

 天井が低く、窓一つないこの部屋は、かつて生きながら存在を殺されていた少年時代、カノンが一人で過ごしていた場所である。
 棚を埋め尽くす書物は、サガによる、カノンの英才教育とも呼ぶべき熱心な指導に使われたものだし、双児宮の奥深くに隠された空間へたどり着けるのは、今も昔も、カノンの他にはサガのみだ。
 もっとも、学習時間を除いてサガがこの部屋を訪れるのは、悪さを働いたカノンへ雷を落とす時と相場が決まっていたが。

 ただしカノンとしても、因習に縛られ、大人しく籠もりきりだったというわけではない。サガのふりをして聖域をうろつくこともあれば、気晴らしに麓の村まで降りることもしばしばあった。一時は、寝るためだけの部屋として使用していたこともある。
 いずれにせよ、この部屋に良い思い出がないことだけは確かだった。

 なぜ今さら、このようないわくつきの場所で、一人虚しく朝を待たねばならないのか。

――双子座のカノン、蠍座のミロ。両者ともに四十八時間、自宮での謹慎を言い渡す。

 それが夕刻、サガから二人へ下された沙汰だった。
 謹慎といえばまだ聞こえはいいが、いわゆる軟禁措置であることに変わりはない。聖域にとどまる中で、恐らくは初めて受けたであろうこの不名誉な処分を、ミロが今、どのように感じているのかを想像すると、せめてもう少し場所を考えるべきだったかと、カノンは苦い気持ちになる。だが、それももう後の祭りだ。

 現在の双児宮には、サガの私的スペースとは別に、カノンの個人的な生活空間までもが確保されている。つまり軟禁状態といえども、ある程度の自由は保証されているということだ。
 急な余暇を与えられたとでも思えばいいかと、前向きに構えていたカノンへ告げられたのは、しかしご丁寧にも、「この部屋で」という条件付きだった。

 はじめはどんな嫌がらせかとも思ったが、ある程度の体裁が必要だったのだろうと、カノンは推測する。それに罰と言われれば、確かにこれ以上ふさわしい場所はないとも言えた。
 聞けばサガは、所用で双児宮へと降りる途中だったらしい。そこへ雑兵らから、何やら天蠍宮前で黄金二人がやり合っているという報告を受け、道すがら、サガ自身が出向いたのだという。
 誤解は解けたものの、教皇みずからが仲裁に入るという異例の事態を引き起こしてしまった手前、かたちだけでも何らかの措置を執らねばならないと、サガが判ずることは想像に難くない。それが実弟であるカノン絡みであれば尚更だ。
 だからあえて反駁することはせず、カノンはただうなずき、僅かばかりの水と食料を手に、この部屋へとやってきた。

 それにしても、まさかまたこの空虚な空間へ、しかも謹慎という名目で押し込められることになろうとは。
 カノンは嘆息した。
 この部屋では他にすることもないので、必然的に本を読むか横になるかの二択になるのだが、あいにく読書向けのものはないし、かといって横になったところで、一睡もできそうにない。
 眼を閉じれば、少年時代の暗澹とした思い出がいやおうもなく呼び起こされてしまうし、それ以上にミロのことが気になった。あと一歩というところで邪魔が入ったのは本当に痛い。
 一刻も早くミロに会わねばと感じる一方で、もう少し考える時間を与えてやった方がいいのかも知れないとも思う。だが、要らぬ猶予を与えた結果、事態があらぬ方向へ転じるのだけは、できれば避けたい。あの様子を見る限り、あまり間を置かない方が良さそうだ。となると――。

 部屋の外に、なじみのある小宇宙を感じたのはその時だ。
 相手が誰かなど、確認するまでもなかった。
「……開いている」
 ためらうような気配を感じたので、促してやると、石造りの古びた重扉が、静かに部屋の内側へと押し開かれた。







 半刻前。

 聖域の上空から雨雲が去り、ちらちらと星々が瞬きはじめる深夜を待って、ミロは天蠍宮を抜け出した。
 謹慎とはいえ、まさか天蠍宮の外に見張りが置かれるわけでなし、たとえそのような状況になったとしても、見張りの目を難なくかいくぐれる自信が、ミロにはある。あまり胸を張って言えたことではないが。

 踏み慣れた石段を駆け降りて、各守護宮を通り抜け、目指す先は双児宮だった。抜け出す前にきちんと確認したわけではなかったが、時刻は午前一時をまわった頃だろうか。
 このような時間に訪ねても、カノンはもう、寝入っているかも知れない。
 けれどミロには、どうしても今、カノンに会わねばならない理由があった。


 巨蟹宮を過ぎれば、双児宮は目と鼻の先だ。
 光と闇の迷宮――双子座の黄金聖闘士を守護者に戴くこの宮が、かつてそう呼ばれたことの意味を、今ではミロもよく理解している。

 たどり着いた宮殿内に灯りはない。だが、黄金聖闘士はみな総じて夜目が利く。
 夜をいっそう深く感じられる内部へ、音もなく足を踏み入れると、ミロはさらに奥へと突き進んだ。

 迷いはなかった。
 黒よりもなお暗い闇の中にあっても、目的の人物の小宇宙は、容易にたどることができたからだ。

 急ぎ足で歩を進めながら、ミロはただひたすらに、その場所を目指した。







 扉を開けて、まずミロの視界に入ってきたのは、狭い寝台の上で、窮屈そうに横たわるカノンの姿だった。ミロが後ろ手に扉を閉めると、カノンは緩慢な動作で身を起こした。
「……どうやってここへ?」
「サガに聞いた」
 私闘だと断じられた原因は、十中八九、ミロが燃焼させた小宇宙のせいだろう。成り行き上とはいえ、応戦する様子さえ見せなかったカノンまで巻き添えにしてしまったことを、ミロは悔いていた。
 聖域におけるカノンの立場は、未だ微妙だ。万一この沙汰が公になろうものなら、理由や事実がどうであれ、よもや反旗かと、火のない所に煙が立つ可能性も十分に考えられる。それだけは何としても防がねばならない。
 聞き入れられずとも、この沙汰は公平でないと訴えるつもりで教皇宮へ参じたミロは、カノンが大人しく沙汰を受け入れ、双児宮の奥深くに隠された空間へみずから引き籠もったと、サガから告げられたのだった。

「……サガが」
「なぜ、よりにもよってここなんだ。自虐癖にもほどがある」
 不躾に訊ねられ、カノンは思わず眉をひそめた。
 サガの物言いには語弊がある。カノンがここへ来るよう仕向けたのは他ならぬサガ自身であるし、それではまるでカノンが、好きこのんでこの部屋へ閉じこもっているように聞こえるではないか。
 それより気がかりなのは、双児宮独得の構造を生かして形成されたこの空間へ、ミロがどのようにして無事たどり着いたのかということだ。
 たとえ今となっては用済みだとしても、隠匿され続けてきたこの場所の存在を、他宮の守護者へおいそれと明かしてしまって良いものか。
 疑問や言い分は幾つも浮かんだが、カノンは先に、ミロの問いへ答えてやることにした。
「……別に、どこだって変わりはない」
 他に正しいことなど、あろうはずがないという想いで。
「おまえがいないなら」
 それはカノンが常に胸へ抱き、繰り返し思いを馳せてきた事実であるのだが、思えば口にしたのは、これが初めてだったのかも知れない。
 ミロは一瞬眼を瞠ると、ひどく苦しそうな顔になり、ため息をついた。

――どうしてそんな眼ができる。
 真っ直ぐで迷いのない、熱の籠もった、訴えかけるような碧い双眸。
 それは夕刻、降りしきる雨の中で、カノンがひたすらミロへ捧げ続けたまなざしでもある。
「……。だから、それをやめろと言うのだ」
 ひたむきなまでに、おのれへ注がれる視線をはっきりと感じ取り、ミロの頬には知らず朱が上った。そんな風に見つめられると、ミロはいつも、言いしれぬ不安と焦燥感に駆り立てられる。
 その視線に、何と応じればいいのかわからない。
 自分は、カノンに見合うような想いもまなざしも、持ち合わせてはいないのだ。
「ミロ」
 カノンが寝台から動く気配を感じ取り、ミロは思わず腰を引かせる。
 けれどカノンは、ただ寝台の上へ腰掛け直しただけだった。
「ここへ来た理由を教えてくれ」
 疑問はもっともだ。夕刻、あれほどカノンを拒絶してみせたミロが、わざわざこのような夜更けに、自分からカノンの元を訪れるなど、何があったのかと勘繰られても仕方がない。
「……話の続きを、聞きに来た」
 頬の筋肉が、緊張でひどく強張っているのがわかる。そもそも感情を抑えたり、隠し通したりすることは苦手だ。昔から。
 今自分は、とても滑稽な行動を取っているのだろう。何を今さらと、カノンは呆れているかも知れない。
 そうだとしても構わない。それ以上に知りたい。
 あの時、カノンが放ったセリフの先を。
 恐れるなと、教えてやると、カノンは言ったのだ。
 カノンの言う、不平等な感情が向かう先に何があるのか。
 それを知ることが、受け入れることが強さだというのなら。
「できるのなら、証明してみせろ」
 挑むように告げてやると、カノンは一瞬だけ、虚を突かれたような表情になり、一拍遅れて、ああ、と短い返事をした。

 ミロのつり上がり気味の目尻と、日に焼けた頬。緊張から来るものなのか、開いたシャツの胸元からのぞく、頬よりうすい肌色に艶めく鎖骨のあたりまでもが、僅かに赤い。
 眼を逸らしたいのはこちらの方だと、内心でため息を吐きつつ、カノンは顎で木製のチェアを指し示した。けれどミロはそれを無視して、寝台の傍までつかつかと歩み寄り、ちょうど間に一人分のスペースを空け、カノンの隣へ腰を下ろした。スプリングの入っていないごく簡素な寝台は、二人分の重さで弾むこともなく、ぎしりと苦しげな音だけを室内へ響かせる。
 両膝を広げて肘を置き、手のひらを祈るように組み合わせてうつむくミロの仕種は、かたくななようでいて、実際はひどく無防備だ。何かあった時、それではとっさに拳も振るえないだろうに。
 信頼されているのか、試されているのかわからない、何とも言えず複雑な気分になり、カノンはミロから眼を背けた。そんなカノンの胸中も知らず、ミロが思いついたように面を上げる。
「言い忘れた。条件がある」
「……何だ」
「手短に、わかりやすくしろ。それから、絶対に笑ったり茶化したりしないと誓え。誤魔化すのもダメだ。そうしたら、話を聞いてやる」
 言い忘れたというわりには、ずいぶんと注文が多い。そのちぐはぐさ加減と、子どものような要求に、さっそく相好を崩しそうになりながら、なんとか真顔を保ちつつ、カノンはうなずいた。

 ただできるなら、他の場所で告げたかったと、カノンは思う。
 本音を言えば、積年の鬱屈と不満ばかりが支配するこの部屋へ、たとえミロといえども、容易に立ち入って欲しくはなかった。だが、ミロがすぐそこまで来ているのを知りながら、門前払いすることなど、カノンには考えも及ばない。殊に今は。
「不満そうな顔だ」
 指摘され、カノンがふと隣を見やれば、それこそ不満顔のミロと眼が合った。
「……ここは、オレにとって牢獄のような場所だ。愉快な顔などできるはずもない」
 本心だった。自嘲気味に頬をゆがめてみせると、ミロは何か言いたそうな顔になり、言葉を選ぶようにして、カノンのセリフを繰り返した。
「牢獄、か」
「たとえばの話だ」
 ミロは首をめぐらせ、室内のそこかしこへ視線をうつろわせた。だが、必要最低限のものしか置かれていないこの部屋には、ミロの目を楽しませるようなものは何もない。
 ややあってから、その視線をぴたりとカノンへ定めると、ミロはためらいがちに、けれど、確かな力強さで、こう告げた。
「ここには、おまえの小宇宙がある。……オレは、嫌いじゃない」

 現金で、さも単純なものだ。
 いつだって理屈でなく、ミロのセリフ一つで、底知れぬ深淵からすくい上げられたような気持ちになれる自分は。
 それは、はじめから変わらない不文律の掟のようなものなのかも知れない。
 ミロに深紅の衝撃を与えられた、あの夜から。

 どうすれば、この胸に燻る想いの丈を、あますことなくミロへ伝えられるだろう。
 カノンがまとう空気が変化したのを察してか、ミロが寝台から腰を浮かせようとする。その身体を、無意識に伸びたカノンの両腕が捕らえ、力強く抱き寄せた。唐突な抱擁と、寝台の軋む音に、ミロが息を呑む気配がした。
 もう言葉ではあらわせないのかも知れない。こうして触れる以外には。
 内心で自分へ言い訳しつつ、カノンはミロを抱く腕に力をこめた。
「……教えてやる」
 半分は本当で、もう半分は嘘だ。
 ミロに教えられるのは、いつも自分の方だ。これ以上は想いようがないと感じる高みに登りつめても、ミロは、いともかんたんにカノンを引きずり下ろす。最果てなどないのだと、ミロに会うたび思い知らされる。いつでも。
 カノンには、それがどうしようもなく心地よくて、たまらないのだ。
 だからそのミロを、今はただ、解放してやりたい。それができるのは自分だけだ。カノンは深く息を吸った。
「オレにどう応えたらいいかわからなくて、いらついてる」
 腕の中にあるミロの双肩が、かすかに揺れる。
「受け入れたらどうなるかわからなくて、恐れているだけだ」
 そんな眼で見るなと、まるで悪事でも働いたかのように、きまりの悪い顔になるミロを見て、カノンはそう直感した。
 想われても、返す言葉を持たず、伝えるすべを知らないミロが、迷い、戸惑うもの。恐れを抱き、不安に思うもの。
 そのどれもが、怖がらなくていい、眼を背けなくていいものなのだと伝えたい。
 この答えで、果たして正解なのかは、カノンにもわからない。けれどどうか、そうであって欲しいと思う。
 傲慢で身勝手な、たとえ救いようのない思い上がりだとしても。

 薄いシャツ越しにつたわってくる、ミロの鼓動が早い。
 それを遙かに上回る速さでリズムを刻む心音を、どうにかして伝えたくて、カノンは手繰り寄せるように、ミロの背を深く抱え込んだ。ミロは僅かに身を捩ると、カノンの顔めがけて、力任せに拳を放ってくる。難なく受け流し、利き腕を捕らえると、顔をしかめるミロの耳元へ、言い含めるようにささやいてやった。
「ミロ」
 いよいよ本格的に腕の中で暴れ始めるミロを許さず、カノンはその黄金のたてがみへと指を差し入れ、頭ごと抱き寄せた。まつげに触れるか触れないかの距離まで顔を寄せると、焦がれる吐息が頬にかかる。こうなるともう、くちびるで触れずにはいられなかった。

 強引に顎を捕らえて上向かせ、薄い上唇をついばんだ。追えば逃げようと彷徨うくちびるは、掠めただけで甘く感じられ、その吐息ごと、今すぐ封じ込めてしまいたい衝動に駆られる。
 舌で侵入を試みようとする際、抵抗する歯がカノンのくちびるに当たり、刹那、鉄の匂いが鼻をついた。首を振って逃れようとするくせ、ミロは、カノンの手を払おうとはしなかった。なだめるようにミロの髪を梳く指先も。
「う、ン……っ」
 一度くちびるが合わさってしまえば、侵入は容易だった。こじ開けるように歯列を割り、粘膜ごと味わうように舌で探れば、すぐに熱い舌とぶつかった。狭い口内だから、元より逃げ場も何もない。そんなことはわかっているだろうに、探り当てられて、ミロの顎が緊張でわななくのを直に感じた。
 腰に添えていた手のひらを背すじへと這わせ、シャツ越しに撫でさすってやると、逃げ惑うミロの舌先が、いっそうの焦りを帯びて蠢いた。獲物を追い詰める、緊張感にも似た快感に、カノンの背すじもぴんと張りつめる。
 髪に絡めていた五指を、普段は隠れて見えない耳殻に移す。親指でそっとなぞってみると、ミロは声もなく喉を仰け反らせ、くぐもった熱い吐息を漏らした。
「や、めろ」
 けれど息を継ぐ間に、かろうじてミロが紡いだ言葉は、何ともつれない制止の声だ。
「オレは、違う。おまえとは、」
 熱に蕩けた瞳で何を言うかと思えば。くちづけに感じ入るミロが嬉しくて、カノンは危うく笑い出すところだった。
「オレは――」
「同じように振る舞おうとしなくていい」
 ミロのセリフへかぶせるようにしてささやく。続きを言わせるつもりはなかった。
「教えてやると言っただろう」
 なるべく笑い顔にならないよう努めながら、カノンはミロのせまい額へ、静かにおのれの顔を寄せ、触れ合わせた。ミロのどんな表情も、もう、一瞬たりとて見逃したくはない。
 向けられるベクトルが、同じでなくとも、今は構わない。ミロはそのことに罪悪めいた戸惑いを抱いているようだが、カノンにとっては十分だった。繰り返すが、今はただ、それで。
「キスの時は、目を閉じればいい」
 まばたきを繰り返すミロのまつげが、カノンの上頬を何度も掠めた。
「抱きしめられたら、抱き返すだけでいいんだ」
 強張っていたミロの身体が、みるみるうちに弛緩し始める。カノンの胸を押し返そうと、突っ張っていた肘は、やがて緩やかに力を失い、ゆっくりと下ろされた。
「……、……謹慎中だ」
「そんなもの、いちいちこだわっていられるか」
 大人しく腕の中におさまりかけているミロの鼻先に、くちびるを寄せながら、カノンは、その青い双眸を覗き込んだ。
「オレはもう我慢できない」
 その瞳がどんなに、恐れや不安に揺らめこうとも、もう。
「ずっと、おまえにこうして触れたかった」
 何かを言いかけて、震えるように動いたミロのくちびるへ、カノンは祈るような気持ちで、触れるだけの静かなくちづけを捧げた。
 力を失っていたはずのミロの腕がためらうように動いて、それから、そっとカノンの背へ回された。